「老後移住」が投げかける問いと、千葉で考える“終のすみか”

(2025年11月16日)

 

 

「老後移住」が投げかける問いと、千葉で考える“終のすみか”

「老後はどこで暮らすのが自分らしいのか」。
75歳以上の後期高齢者が他の市区町村へ移り住むケースは、この10年で約3割も増えました。
その行き先は、意外にも「都会」。医療・介護・買い物の利便性を求めて、終のすみかを都市部に求める動きが加速しています。
一方で、介護事業所が存在しない自治体も少なくなく、「どこで暮らすか」がそのまま「どんな介護を受けられるか」を決定づける時代になってきました。
本コラムでは、統計や介護情報サイトのデータを踏まえつつ、特に千葉県に焦点を当て、「老後移住」「終のすみか」「住まいと介護」を一体で考えていきます。最後に、相川スリーエフとしてお伝えしたいメッセージも添えました。


「老後移住」が増えているという現実

新しい街並みを見下ろす老夫婦の背中
新しい「終のすみか」

日経新聞の記事でも紹介されているように、「老後移住」が静かに、しかし確実に増えています。鹿児島県指宿市で暮らしていた82歳の女性は、2年前に夫との死別をきっかけに、単身で福岡市内の高齢者向け住宅へ住み替えました。関東に暮らす子どもが出張の際に立ち寄りやすく、通院や買い物にも便利な立地に魅力を感じたといいます。

このようなケースは、今や決して珍しくありません。総務省の統計では、別の市区町村に住民票を移した75歳以上の後期高齢者は、

  • 2014年:14万7,000人
  • 2024年:19万7,000人

と、およそ10年間で約3割増加しました。一方で、65〜74歳の前期高齢者は横ばい、25〜64歳は約1割減です。つまり、「75歳以上で動く人」が目立って増えているのです。

転入超過が最も多いのは札幌市で、2012年以降は毎年1,400人超。埼玉県さいたま市、福岡市、横浜市なども2024年には500人以上の転入超過となりました。相模原市や八王子市といった首都圏郊外も同じ傾向が見られ、比較的大きな都市が、他の自治体から後期高齢者を吸い寄せる構図が浮かび上がっています。

これは「田舎より都会が好き」という単純な話ではありません。医療・介護・買い物・移動手段…老後に必要なものを冷静に見つめた結果、「暮らしやすさのある街」へ動き出す人が増えている、とも言えます。


高齢者はなぜ都会へ向かうのか

■ 医療と介護サービスを求めて

札幌市が2021年度に行った調査によると、市外から転入してきた後期高齢者に移住理由を尋ねたところ、最も多かったのは「親族との同居」、続いて「入院・入所」でした。札幌市内には、ベッド数20床以上の病院が226カ所あり、北海道全体の約4割が集中しています。

全国的に見ても、

  • 医療機関の数・規模
  • 介護施設・介護事業所の数
  • 在宅介護サービス(訪問介護・デイサービスなど)の選択肢

といったインフラは、どうしても大都市圏や中核市に集まりがちです。

2024年の厚生労働省の調査を分析すると、全国1,741市区町村のうち、介護事業所が存在しない自治体は、

  • 通所型(デイサービスなど):172自治体
  • 訪問型(訪問介護など):115自治体
  • 通所型・訪問型どちらもない:58自治体

という結果でした。住んでいる自治体によって、そもそも選択肢が「あるか・ないか」から違ってしまう――これが日本の現実です。

■ 地方での生活負担の重さ

地方で暮らす魅力は、ゆったりとした時間・自然の豊かさなど、もちろんたくさんあります。しかし、高齢期になると次のような負担がじわじわと重くのしかかってきます。

  • 買い物に行くにも車が必須で、運転を続けられなくなると一気に不便になる
  • バスや電車の本数が少なく、通院に時間と体力を取られる
  • 雪かきや庭木の手入れなど、体力仕事の負担が続く
  • そもそも近くに総合病院や専門医がない

こうした日常の負担の積み重ねの末に、「少しでも元気なうちに、便利な街へ移ろう」と考える高齢者が増えているのです。介護大手の担当者は「今のシニアは自立志向が強く、子どもに迷惑をかけまいと、自分から都会へ出る後期高齢者が多い」と語っています。

■ 子どもの近くへ、という選択

高齢者向け住宅を運営する事業者のヒアリングでは、「子どもや孫の近所へ引っ越してくる高齢者」が増えているという声もあります。要介護認定を受けていても、すぐに施設に入れるとは限りません。地方で暮らす親の生活を手助けするため、自宅やその近所に親を呼び寄せる人も多くなっています。

ここでポイントになるのは、「どの街なら、親も自分たちも暮らしやすいか」という視点です。東京のど真ん中でなくても良い。むしろ、“都市の利便性 + 住宅の選択肢 + 介護資源 + 落ち着いた環境”のバランスが取れている街が求められています。


千葉県が老後の暮らしに向いている理由

そこで注目したいのが、東京に隣接しながらも、自然環境と都市機能の両方を持つ千葉県です。老後の生活拠点として千葉県をおすすめできる理由を、データとともに整理してみましょう。

■ 高齢者支援・福祉サービスの充実

千葉県内の各市町村には、地域包括支援センターが設置され、高齢者の相談窓口として機能しています。介護サービス・健康相談の提供に加え、健康教室・運動教室など、健康増進につながる取り組みも盛んです。

千葉県独自の取り組みとして、「しない、させない、孤立化!」を掲げた「ちばSSKプロジェクト」も展開されています。各自治体が、サロン活動や人材育成活動などを通じて、高齢者の孤立防止と地域づくりを進めている点も特徴です。

■ 都心へのアクセスが良い

千葉県の大きな魅力のひとつは、東京都心へのアクセスの良さです。JR総武線・総武快速線、常磐線、京成本線、東武アーバンパークライン、つくばエクスプレスなど、多様な鉄道路線が乗り入れています。

  • 千葉駅 → 東京駅:JR総武快速線で約40分
  • 船橋駅 → 東京駅:JR総武快速線で約25分
  • 松戸駅 → 上野駅:約20分、東京駅約30分
  • 柏駅 → 東京駅:約30分、秋葉原駅:約25分

都心の総合病院・専門医療機関を利用しやすい距離感でありながら、自然も多く、住宅の選択肢も幅広い――このバランスは、老後の生活の質を大きく左右します。

■ 商業施設の豊富さと「日常の便利さ」

千葉県内には、大型ショッピングモール、スーパーマーケット、商店街など、多彩な商業施設が数多く点在しています。幕張新都心やターミナル駅周辺のモールでは、日用品から専門店まで一度に用事を済ませることができます。

また、各エリアの商店街やスーパーでは、新鮮な食材や地元の特産品が手頃な価格で手に入るのも魅力です。「車がなくても暮らせる」「徒歩圏内・バス圏内で生活が完結する」という視点で見ると、千葉県内の多くの街は老後に適した環境と言えます。

■ 介護施設・老人ホームの選択肢が多い

介護情報サイト「LIFULL介護」のデータによれば、2025年11月16日現在、千葉県内の老人ホーム・介護施設(特養・老健・有料老人ホームなど)の掲載件数は2,317件。市区町村別に見ると、

(以下はLIFULL介護の検索結果をもとにした件数抜粋)
千葉市全域、船橋市(200件)、松戸市(198件)、柏市(152件)…など、県内の中核都市に施設が集中的に存在しています。

特に船橋市・松戸市・柏市は施設数が非常に多く、老後の選択肢という意味では「都市インフラ+介護インフラ」がそろったエリアだと言えます。

■ 有料老人ホームの費用相場が全国より抑えめ

千葉県の有料老人ホーム費用相場を見てみると、

  • 入居時費用ありの場合:平均470万円(全国相場710万円より約240万円安い
  • 入居時費用ありの月額費用相場:約22.1万円(全国相場25.9万円より安い傾向)
  • 入居時費用なしの月額費用相場:約21万円(全国相場21.8万円とほぼ同水準)

つまり、首都圏の利便性を享受しながらも、老人ホーム・介護付き住宅の費用は全国平均よりやや抑えられている――というのが千葉県の特徴です。LIFULL介護上では、有料老人ホームだけでも620件が掲載されており、特に松戸市に約70件と、多くの施設が集中しています。

「自宅か、施設か」という二択ではなく、「自宅をベースにしつつ、将来必要になったら施設も検討できる」だけの選択肢があること。これも、千葉県を老後移住の候補にする大きな理由になります。


老後に住みやすい千葉県のおすすめ5市

ここからは、千葉県内で老後に住みやすいおすすめの街を5つ、ご紹介します。いずれも「都心アクセス」「医療」「買い物」「高齢者福祉」のバランスが良いエリアです。

■ 千葉市

千葉市の魅力は、まず交通の利便性です。千葉駅から東京駅まではJR総武快速線で約40分。通院や買い物、趣味の用事などで都心へ出たいときにも非常に便利です。

市内には大型商業施設も多く、日用品から外食まで選択肢が豊富です。医療面では、千葉大学医学部附属病院や千葉市立青葉病院などの基幹病院があり、万が一の際にも安心感があります。

また、千葉市社会福祉協議会では、

  • 高齢者世帯を対象とした食事会や配食を行う「ふれあい食事サービス」
  • レクリエーションの場を提供する「ふれあい・いきいきサロン」
  • 地域の高齢者と住民が散歩を通じて交流する「ふれあい・散歩クラブ」

といった取り組みを行っており、高齢者福祉サービスが充実しています。

■ 船橋市

都心へのアクセスという点では、船橋市は千葉市以上に抜群の利便性を誇ります。船橋駅から東京駅まではJR総武快速線で約25分。京成本線や東武アーバンパークラインも利用でき、多方面へスムーズに移動できます。

船橋駅周辺には大型ショッピングモールが複数あり、買い物・外食・娯楽施設が充実。生活のほとんどを市内で完結させることも可能です。

高齢者向け福祉サービスも豊富で、地域包括支援センターや各種介護施設が整っています。船橋市医療センターや船橋中央病院などの医療機関もあり、高齢者が安心して暮らせる環境が整っているエリアです。

■ 白井市

白井市は、2023年度「本当に住みやすい街大賞シニアランキング」で2位を獲得した西白井を有する市です。生活環境・レジャー環境・福祉・医療環境のバランスがよく、街の安全性や交通の利便性も評価されています。

北総鉄道北総線が通っており、白井駅から日本橋駅までは約40分。都心へのアクセスも良く、生活圏を狭めることなくセカンドライフを楽しむことができます。

ショッピングモールやスーパーマーケットなどの商業施設も点在し、日常の買い物に困ることはほとんどありません。白井市立病院をはじめ、地域のクリニックも充実しており、医療面でも安心できます。

■ 松戸市

松戸市は、JR常磐線・新京成電鉄が通る交通の要衝です。松戸駅から上野駅までは約20分、東京駅までは約30分と、都心へのアクセスが非常に便利です。

松戸駅周辺には駅直結の大型ショッピング施設があり、買い物や食事を楽しめるほか、街全体としても商業施設が多く、日常の利便性は高いエリアと言えます。

医療機関も多く、多様な専門クリニックや病院が点在しています。松戸市は「高齢者が安心して暮らせる街づくり」に力を入れており、市のウェブサイト「まつどDEいきいき高齢者」では、高齢者向けのサービスや施設情報が分かりやすく整理されています。

■ 柏市

柏市は、JR常磐線とつくばエクスプレスが通る交通の結節点です。柏駅から東京駅までは約30分、秋葉原駅までは約25分と、通勤・通院・お出かけすべてに便利な立地です。

柏駅周辺には複数の大型商業施設が集積しており、ショッピング・外食・文化施設などが充実しています。市内には柏市立柏病院や柏厚生総合病院などの総合病院に加え、多くのクリニックもあります。

住宅地としても人気が高く、戸建て・マンションともに選択肢が豊富です。「都心からほどよい距離感」「生活の便利さ」「住宅の選びやすさ」を兼ね備えたエリアとして、老後の移住先としても注目されています。


施設だけに頼らない「終のすみか」の考え方

ここまで見てきたように、千葉県は「施設の選択肢」が豊富であり、「自宅で暮らしやすい街」も多いエリアです。では、実際に終のすみかを考えるとき、どのような選択肢があるのでしょうか。

■ 船橋・柏・松戸エリアで“住む家”を考える

先ほど触れたように、LIFULL介護のデータでは、千葉県内の老人ホーム・介護施設は2,317件。その中でも船橋市・松戸市・柏市は施設数が多く、自宅から施設への移行も見据えたエリアと言えます。

しかし、必ずしも「すぐに施設に入る」必要はありません。千葉県内、とくに船橋市・柏市・松戸市などでは、

  • 病院・クリニックが多い
  • 商業施設が充実している
  • 駅周辺だけで日常の用事が完結しやすい

という特徴があり、「自宅で暮らし続ける」選択肢も現実的です。

例えば、駅近では土地価格が高くなりますが、少しだけ駅から離れれば、土地の坪単価はおおよそ50万円前後というケースも少なくありません。30坪の敷地であれば、土地代は約1,500万円。建物は、

  • 耐震・断熱性能をしっかり確保した木造住宅で、内装のこだわりを抑えれば2,000万円台前半ほど
  • 内装や仕様にこだわった完全注文住宅なら3,000万円台

といったイメージが現実的なラインとして見えてきます(構造・仕様・エリアにより変動あり)。

■ 新築だけでなく「中古+リノベーション」という選択

老後の住まいを考える際、新築戸建てだけが選択肢ではありません。中古住宅を購入して、バリアフリー・断熱・耐震補強・水まわりの刷新などをセットで行う「中古+リノベーション」も、有力な選択肢です。

田舎暮らしで長く戸建てに住んでこられた高齢者の方の中には、「マンション生活には馴染まない」という声も多く聞かれます。マンションの良さは、

  • 庭や外構・外壁などのメンテナンスを自分でしなくてよい
  • オートロック・管理人などのセキュリティ面で安心感がある

といった点です。一方で、

  • 修繕積立金・管理費が年々増えていくことへの不安
  • 管理組合などのルール・付き合いが負担になる可能性

という懸念もあります。

最近、相川スリーエフに寄せられるご相談の中には、

  • 「京成線の駅周辺で、買い物に便利で病院もあるエリアに住み替えたい」
  • 「マンション暮らしをやめて、コンパクトな戸建てに移りたい」

といった声が増えてきています。20年前までは「広すぎる戸建てからマンションへ」という流れが主流でしたが、現在はむしろ「マンションから戸建てへ」という逆の動きも目立ってきました。

■ 「施設に入る/入らない」ではなく、「どう備えるか」

千葉県の有料老人ホーム相場は、全国よりやや安い水準にあり、施設の選択肢も豊富です。しかし、施設に入らなくとも、病院や商業施設が充実した街に自宅を構えれば、自宅での生活を長く続けることも充分に可能です。

大切なのは、「施設に入るかどうか」という二択ではなく、

  • 元気なうちは、自分のペースで暮らせる自宅と街を選ぶ
  • いざ介護が必要になったときには、移行先(サービス・施設)の選択肢がきちんとあるエリアを選んでおく

という「二段構えの備え」の発想です。


相川スリーエフからのメッセージ

相川スリーエフは、千葉・東京エリアで長年にわたり、新築住宅・リフォーム・窓リノベーション・不動産探しをトータルでお手伝いしてきました。高齢化が進む今、「どんな家を建てるか」「どこに住むか」は、もはや“若い世代だけのテーマ”ではありません。

■ 住まいは“今”だけでなく“これから”も見据えて

私たちが大切にしているのは、住まいを「今だけの箱」ではなく、「これからの人生を支える器」として考えることです。

  • 耐震・断熱性能の高い、安心して暮らせる構造
  • 将来の介護も視野に入れた動線計画・バリアフリー
  • 自然素材や窓の工夫による、ここちよい空気感と採光

これらを組み合わせることで、「年齢を重ねること」がそのまま「暮らしにくさ」につながらない住まいをつくることができます。

■ 窓と住環境が変わると、高齢期の毎日も変わる

私たちは窓リフォーム・断熱リノベーションにも力を入れてきました。窓を変えることで、

  • 冬の寒さ・夏の暑さが和らぎ、健康リスクを減らせる
  • 結露やカビを抑え、住まいを長持ちさせられる
  • 外とのつながりを感じながら、閉じこもりを防ぐ

といった効果が期待できます。高齢期において、「外が見える」「光が入る」「風が通う」ことが、そのまま心身の健康につながる場面は少なくありません。

■ 建築だけでなく、不動産探しもワンストップで

相川スリーエフは、建物づくりだけではなく、土地探し・中古住宅探しのお手伝いも行っています。

「京成線の駅周辺で、買い物に便利で、病院もあって、住み心地の良い場所を探している高齢者の方々」からのご相談も増えています。その多くは、

  • マンションからコンパクトな戸建てへ
  • 地方の大きな家から、都市近郊の住みやすい街へ

といった“老後移住”を前提とした住まい探しです。

私たちは、不動産と建築の両面から、

  • どのエリアが、その方にとって暮らしやすいか
  • どのくらいの土地・建物規模がちょうど良いか
  • 将来の介護や施設利用も視野に入れたとき、どの街が安心か

といった点を一緒に考え、具体的なプランをご提案します。

■ 「老後移住」は、怖いものではなく、“前向きな住み替え”にできる

最後に、相川スリーエフとしてお伝えしたいのは、「老後移住」は決してネガティブなものではなく、自分らしい生き方を取り戻すための前向きな選択にもなり得る、ということです。

田舎で長年暮らした家に愛着があることも、もちろん大切です。一方で、「医療・介護・買い物・交通」が整った街で、コンパクトで手入れしやすい住まいに移ることで、心と時間に余裕が生まれることもあります。

「親のこれからを考えたい」「自分たち夫婦の終のすみかをそろそろ決めたい」と感じたときは、どうぞ気軽にご相談ください。
家づくり・リフォーム・窓・不動産探しを通じて、千葉・東京エリアでの新しい暮らし方を、一緒にデザインしていければと思います。

※本コラムの内容は、統計データや介護情報サイトの情報をもとにした一般的な情報です。具体的な費用・制度内容は時期や自治体により変動しますので、最新の情報は各自治体・専門機関へご確認ください。

 

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